書評「「学習する組織」入門」

書評「「学習する組織」入門」

 

 

 

Twitter書評は以下です。

「「学習する組織」入門」 3.5点以上。原著の翻訳版は読んだことがない。本書は、日本人による入門書のようだ。著者の小田理一郎氏は、マンガ版も出している。(マンガは読んだことがない) 役立つ箇所は所々あった。理論書であり、実用面に活かすには難しい印象かなぁ。

 

 

 以下、気になる箇所を抜粋、要約します。

 

意識と能力の4つのレベル。

知識 スキル 姿勢・立ち位置 あり方。

左のレベルを基盤にしながら、右に行くにつれて、レベルが重なり、意識と能力がより高い次元で効果を発揮できるようになります。

P58から。

 

最初にごく一部の革新的な人たちが新しいアイデアを取り入れ、それに賛同する人たちが徐々に蓄積し、それがある水準を超えると変化が加速し、組織の大半の人が急激に変化すると考えられています。変化が加速する境界のことをティッピング・ポイント(閾値)と言い、システム内の17%の人々が変化を受け入れたときがそのポイントになるとされています。P67。

 

何が航空会社の明暗を分けたのか。P110〜115を詳しく読んでください。

 

複雑なシステムでは、個々の要素の質よりも、つながりの質こそが、システム全体のパフォーマンスに大きな影響を与えます。たとえば、サッカーでオールスターチームをつくっていきなり試合に臨んでも、日々コミュニケーションやコーディネーションの練習を重ねてきた一つのクラブチームに勝てないことがあります。

 

どんなに優秀な人たちを集めてチームをつくっても、つながりの質が悪かったらよい結果は出せません。逆に、平均的な人たちを集めたとしても、そのつながりの質が高ければ、それぞれの持つ力以上の成果を生み出すことが可能です。

 

要素の質に頼るのではなく、つながりの質を高めることこそが、学習する組織の設計と実践の要諦とも言えるでしょう。そして、よいつながりの中で仕事をする人たちはより速く成長するので、要素の質もつながりの質も高い組織に成長していくことが可能となります。P119。

 

 ここでいうバランス型ループのダイナミクスは、「TOC(制約)理論」でいうところの「ボトルネック」や、競争戦略における業界構造の「5つの力」と同類と考えていただいて結構です。TOC理論を開発したゴールドラットも、競争戦略の大家ポーターも、優れたシステム思考の分析から、独自の理論を発展させていきました。

 

システム思考における成長の限界はつまるところ、限界に無配慮な速すぎる成長によって起こります。成長させようとする姿勢が強ければ強いほど、成長の限界は早く訪れ、その後の結果はそうでなかった場合に比べてより悪いものとなります。

 

比較対照として紹介したG社では、ビジネスの成長のボトルネックとなるのは航空機や航路ではなく、従業員の数と質の成長であることを経営陣が見抜いていました。従って、価格破壊によって最高スピードで顧客を獲得するのではなく、ほどほどの価格で顧客・市場を開拓するという、自らがコントロールする抑えが効きました。

 

成長の限界における自己強化型ループは、車のエンジンやアクセルに相当します。そしてバランス型ループは、車止めやサイドブレーキであると言えるでしょう。車止めやサイドブレーキがかかった状態でいくらアクセルペダルを踏んでも、思うような成長は得られず燃料の無駄遣いにしかなりません。

 

成長の頭打ちに向かう状態では、自己強化型ループを強める方向には、レバレッジは存在しないのです。アクセルを踏む代わりに緩めて、そこで浮いた経営資源を車止めやサイドブレーキを外すことに注ぎます。バランス型ループは、目に見えにくいことが多いのですが、しばしば成長のレバレッジとなることがあります。

 

よく「身の丈に合った成長」と言いますが、その時点でめいっぱいのスピードを出して成長することが中長期的によいことかどうかを問う必要があります。48期連続増収増益を続けたある日本企業の経営者は、新製品の投下などによって成長の機会があったとしても、その投下は社員の数と質の両面での成長が整うまで待ったと語っています。人や組織が育つには時間がかかる。ならば、人や組織の成長に合わせて事業を経営する「年輪経営」を行ったのです。

 

この日本の会社の例を見ても、G社の例を見ても、結果的には一時的な成長に身を任せている状態よりも、はるかに大きな規模まで成長し、そして、時間軸で見てもずっと長期にわたって顧客のニーズの充足を続けています。より大きな価値を社会に残しています。P176、177。

 

多くの組織で、経営理念や行動規範が額に飾られたり手帳に書かれたりしているだけで、現実の社員たちの行動とは一致しないことがしばしばあるように、私たちが頭の中で考える自分自身の目標や価値観や行動の理想は、きれいにまとまっていても、実際の行動はその通りになっていないことがしばしばです。

 

たとえば、「私は人に親切だ」と言っていながら、実際のたたずまいが人を寄せ付けない雰囲気だったり、相談事をもちかけにくい行動や言動をとっていたりしたら、周囲の人はその人を親切だとは思いません。このとき、私たちが頭の中で信じている価値観や規範のことを「信奉理論」と呼び、その反対に実際に自分が取っている態度や行動の規範のことを「使用理論」と呼びます。

 

使用理論は、他の人たちからは簡単に観察することができますが、自分自身では観察することがきわめて難しいものです。とりわけ、自分の信奉理論と使用理論が異なる場合は、自分の使用理論は盲点に隠れてしまいます。

 

メンタル・モデルのディシプリンで検証しようとするのは、この使用理論にほかなりません。たとえ心の中では「自分は親切だ」と思っている人も、自分の行動や態度が他の人にどのように映っているか、鏡を置いて見る必要があります。P198、199。

 

 ここできわめて重要なのは、メンタル・モデルは、「自分はこのように考えているはずだ」とか、「このようにありたいと思っている」という前提とは、しばしば異なることです。

 

メンタル・モデルは、自分がどう考えているかの信奉理論ではなく、自分が現実にどのような発言、行動、あるいは身体的な表現をとっているかなど、実際の行動に現われている使用理論なのです。内省の対象となるのは使用理論です。P212。

 

オットー・シャーマーが発案しアダム・カヘンが練り上げた、話し方と聞き方の4つのレベルというモデル(図6−3)が、そのプロセスを理解するのに役立ちます。このマトリックスは、横軸が「全体優位」か「部分優位」かの分岐を示し、縦軸は「既存の現実を再現する」か「現れてくる現実を具現化する」かの志向の違いを示し、縦軸で4つの象限に分かれています。詳しくはP230〜239。

 

 もしみなさんが、5つのディシプリンを採り入れたいと考えるならば、まず自身やチームの学習能力がどの段階にあるかを自己評価してみるとよいでしょう。ダニエル・キムは、能力一般についての初心者から名人にいたるまでの段階を、表9−1のように整理しています。

 

初心者は、手法やツールなどの型を知る知識の段階です。中級者・上級者は、その知識を活用して、わかるだけでなくできるようになりスキルの段階に到達します。通常は研修、自習、OJTやアクション・ラーニングを積み重ねることでおおむね6〜8ヶ月で習熟していきます。なかには自身の職業経験などを通じて、上級者レベル以上の対人スキルや概念スキルを持っている場合もあるでしょう。

 

達人の段階になると、分析に頼るのではなく直観的に理解し、焦点を当て、行動できるようになります。さらに、名人の段階では、意識せずとも、今ここで一緒にいる人たちとの間で、チーム全体としての理解や行動を自然に促すことができるようになっていきます。

 

達治・名人の段階に達したリーダーたちは、不確実な時代にあって目指す場所を示すビジョンの力、自身の思考、行動、結果の間の不一致を探求して葛藤から創造を生み出す力、自分自身の感情や脆さをさらけ出すことで共感を高める力など、新しいタイプのリーダーシップの力を活用します。さらには、組織の文脈に応じて今ここの瞬間に最適のリーダーシップ力の選択を行えるようにもなります。

 

その習得は適切な手法とインフラ、メンターの存在をもとに早くても数年かかり、しばしばキャリアをかけて磨き続けることで習熟できるものです。それはスキルの段階ではなく、姿勢・立ち位置やあり方の段階で人としての自身を磨く、道の領域にあるからです。

 

本書に紹介する5つのディシプリンの手法はつまるところ、手段に過ぎません。しかし、重要なのは手法ではなく、人がどのように世界観を進化させていくかです。学習する組織のディシプリンの根底には、これからの時代を切り拓くヒントとなるような哲学や世界観が秘められています。そして、あなたやあなたの職場の人々の心の奥と響き合ったとき、未来に関するさまざまな可能性が見えてくるでしょう。

 

それぞれのディシプリンの真髄は以下のものでした。

自己マスタリー。ビジョンと現実の両方を見据えて探求・内省を行い、自ら意識的に選択を行うこと、そして根源とつながって自身のあり方を磨き続けること。

システム思考。組織や市場や社会における相互関連性を理解すること、多様な側の集まった全体性を感じること。

メンタル・モデル。自らの思考やコミュニケーションの開放性を保つこと、そして、自らの無知を知りながら真実を愛する心を育むこと。

チーム学習。メンバーたちが「今ここ」にありのままにいてエネルギーを集め、メンバー間の意図や理解が「合致」した状態を生み出すこと。

共有ビジョン。メンバーの間で互いの目的やビジョンの共通性を見出し、その理念と互いに対してコミットするパートナーシップを築くこと。

 

リーダーの語源は、古来、新しい場所を模索して、境界を踏み越え暗闇に向かって歩き始める人たちのことを指したと言います。学習する組織の真髄にある哲学や世界観が、あなたと仲間たちとが大切にする未来の実現への歩みにおいて、暗闇を照らす灯火となることを願います。P387〜389。以上、ここまで。

 

参考・引用文献。