書評 武器としての経済学

「書評 武器としての経済学」

 

 

 

書評としてのつぶやきは以下です。

 

「武器としての経済学」 4.5点。最近の大前研一氏の低迷や汚名?をすべて覆したかのような素晴らしい本。政治家やビジネスマンは必読。企画力、提案力がすごい。大前さんは固有名詞の羅列作戦じゃなく、論理と数字による洞察で攻めた方がいい。

 

 

本書を読了して思ったことは、論理と数字による洞察はかなり説得力があるということです。現状分析から始まり(データにより)、それらをもとに論理と数字で、理論を組み立て、企画、提案するのが一番、説得力があるような気がします。

 

その力を身につけるのはかなり難しいことですが、本書を読めば、どういうものか探ることはできるでしょう。これくらいの企画力、提案力が欲しいですわ。

 

 では、以下、私が気になった箇所の抜粋です。

 

本来、株式市場というのは個々の企業の業績を分析・評価しながら選別して売買するものだ。だが、日銀とGPIFは企業を選ばず、インデックスに沿って広く薄く投資する「パッシブ運用」が中心なのである。

 

これは大企業の株を精査しないでまとめ買いしているようなものだ。その結果、上場企業が四半期ごとに公表している業績報告はほとんど意味がなくなり、業績が低迷して株価が下がってもおかしくない企業まで、軒並み株価が上がったり維持されたりしている。

 

日銀がETFを年間6兆円買うと、日経平均を2000円ほど押し上げる効果があるという試算もある。それが「底堅い」とされる理由なのだ。

 

海外ファンドが逃げ出した

しかも、日本経済新聞(2016年8月29日付け)によると、今や日銀とGPIFを合わせた公的マネーが、東証1部上場企業約1970社のうち4社に1社にあたる474社の実質的な筆頭株主になっているという。

 

これは明らかに不健全な歪んだマーケットであり、「日銀とGPIFのおかげで底堅い」と喜んではいられない。というのは、海外のファンドが急速に日本から逃げ出しているからだ

 

前述したように本来、株式市場というのは個々の企業の業績を分析・評価しながら選別して売買するものだから、上場企業の経営陣は自社株を買ってもらうため、多くのファンドに自社の将来性をアピールする説明行脚をする。

 

たとえば、世界最強のソブリン・ウエルス・ファンド(政府が出資する投資ファンド)と言われるノルウェーの政府年金基金を運用しているノルゲスパンク(ノルウェー中央銀行)や、イギリスのエジンバラやアメリカのボストンなどにある有力な機関投資家を行脚するのだ。

 

これは証券業界用語で「ロードショー」と呼ばれる。上場企業の経営者は、そのように努力して投資家に自社株を買ってもらい、そして保有し続けてもらうのが本来の姿である。

 

しかし、今は企業の経営戦略や業績よりも「時価に対する配当利回りはどれくらいか」が最も重視されるようになった。少なくとも3%以上の配当利回りが得られないと、年金基金を主とした機関投資家に買ってもらえないのである。そこでは将来性はあまり重視されない。

 

さらに、株価上昇が期待できる将来有望な個別銘柄を見つけて大きな儲けを狙う、あるいは逆に苦境にある企業の株式を空売りして利ざやを稼ごうとする海外のファンドにとっては、日銀とGPIFによるPKOで値動きが小さい日本市場は、ダイナミックな面白みがない。だから今、彼らは続々と日本市場から撤退しているのだ。以上、ここまで。P31〜33 

 

日本でも富裕層が増加しているとするデータがある。野村総合研究所が2016年11月に発表した調査によると、2015年に預貯金・株式・債券・投資信託などの純金融資産保有額(保有する金融資産の合計額から負債を差し引いた値)が1億円を超えている日本の「超富裕層」「富裕層」は121.7万世帯で2013年より20.9%増えたという。

 

2015年時点で純金融資産保有額が5億円以上の「超富裕層」は7.3万世帯。2013年に比べて35.2%増加した。1億円以上5億円未満の「富裕層」も114.4万世帯同20.0%増えた。

 

野村総研は、2013年時点では純金融資産が5000万円以上1億円未満だった「純富裕層」と1億円以上5億円未満だった「富裕層」の多くが資産を増やし、それぞれ「富裕層」と「超富裕層」に移行したことが原因と分析。

 

「富裕層」「超富裕層」の純金融資産額は合わせて12.9%増え、2015年時点で272兆円に達して2000年以降で最高になったと推計している。実質賃金が上がらず、控除や手当が減らされる一方の一般サラリーマンにとっては納得しにくい数字かもしれないが、株高などの影響で、富める者がさらに富む状況になっているのだ。

 

とはいえ、私が知る限り、日本の金持ちは資産のやり繰りや相続に悩んでいることが多い。彼らは、日本では最高の45%の所得税55%の相続税を課されるため、シンガポールや香港、ニュージーランドなどに移住するケースも少なくない。

 

しかし、母国を離れた不便や寂しさを感じている人もいるし、相続税対策のために養子縁組をしたり、あえて借金をしたりして節税の工夫を凝らしながら、結局、大半の人が多額の資産を残して亡くなっている。以上、ここまで。P203〜205。

 

以上の知識をもとにすると以下の記事の意図が見えてくるでしょう。

 

5年間にわたるアベノミクスの成果のベスト3は2倍増となった富裕層上位40人の金融資産1.8倍増となった大企業の役員報酬1.7倍となった自民党への企業・団体献金です。以上、ここまで。

 

そして、アベノミクスを支えたのはGPIFの買い支えがあるわけです。今も、選挙前なので、株価が上がり続けています。おそらく、GPIFの買い支えが入っていると思われます。または、それらを織り込んだ層が買いに走っていて、上がるという好循環というわけです。つまり、「国策に売りなし」状態です。あまりにも、おかしな現象ですからね。

 

以下のつぶやきを貼っておきます。私と同じ主張だからですが。

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選挙が終わったら、株価が下がる可能性があります。そして、富裕層、大企業役員などの層以外の一般庶民には恩恵は行きません。もちろん、民主党時代には富裕層さえ増やせなかったのですから、マシといえばマシですが、本来の成長戦略は全然、機能していません。(もちろん、成長戦略は長い目で見る必要があります)

 

安倍政権の本当の正念場というか、価値があったのかどうかは、これからなのです。成長戦略で結果を残せるか?です。金融政策で、GPIFの買い支えで株価が上がるという手法頼みは限界が来ます。

 

では、引用の続きをします。

 

一方で、日本国内にはお金があり余っている。財務省が公表した2017年1〜3月末の法人企業統計によれば、企業の「内部留保額」は、過去最高となる約390兆円。第二次安倍政権がスタートした2012年12月から、なんと4割以上も増加した

 

この傾向は、一般家庭にも当てはまる。前述のように、日本人全体の金融資産総額は年々増加し続け、1800兆円を超えている。2人以上の世界の平均貯蓄残高は1820万円だ(総務省「2016年家計調査)

 

この余っているお金を、どうやったら増やすことができるか?自分で不動産を購入しようとすれば、長期ローンを組まざるを得ず、その期間、負債を抱えることになる。定期預金も国債も何のプラスにもならないということはになれば、リートの平均利回り3.8%に目が行くのは当然なのである。以上、ここまで。P62。

 

 一般的に1人あたりGDPが2万ドルを超えると中進国、3万ドルを超えると先進国とされる。だが、3万ドル経済に向かおうとする中進国は、しばしば為替や労働コストが高くなって競争力を失い、3万ドルに近づくと落ちるという動きを繰り返す。これが「中進国のジレンマ」だ。

 

韓国経済も、調子が良くなるとウォンや労働コストが高くなり、そのたびに競争力を失って落ちるという悪循環に陥っている。一方、日本はかつて、わずか5年で2万ドル経済から3万ドル経済に突き抜け、先進国の仲間入りを果たした。1ドル=360円から70円台になった急激な円高も克服した。では、なぜ韓国は「中進国のジレンマ」から抜け出せないのか? 以上、ここまで。P107。答えは本書で。

 

三つのクラウドとはクラウドコンピューティング」「クラウドソーシング」「クラウドファンディングだ。もはやハードウェアやソフトウェアは、クラウドの中(ネット上)で提供されているクラウドコンピュウーティングサービスを利用すれば、自前で持つ必要はなく、スケーラブル(いくらでも規模の拡大が可能)である。巨大なサーバーを自社の中に置く必要などないのだ。

 

人も、クラウドソーシングで国内外の人材に外注すれば、これまでの数分の一〜数十分の一のコストで済む。たとえば、日本で発注したら3000万円以上かかるシステム設計は、フィリピンの人材に委託すると70万円でお釣りがくる

 

40倍以上の人件費の差がクラウドソーシングによって克服できるわけで、今やブルーカラーよりもホワイトカラーのほうが国境を越えやすい時代になったのである。

 

さらには事業資金も、良いアイデアであればクラウドファンディングによって不特定多数の人たちから容易に調達できる。略。

 

そのうえ、ローコストに事業が進められるクラウドコンピューティングクラウドソーシングの発達によって「サブミリオン」と呼ばれる、100万ドル(約1億1000万円)未満の資金でスタートして2〜3年で急成長する企業が多くなった。事業に多額の資金を用意する必要がなくなったのである。以上、ここまで。P130、131。

 

周知の通り、日本はすでに「超高齢化社会だ。世界保険機構(WHO)の定義では、高齢化率(人口のうち65歳以上が占める割合)が7%を超えれば「高齢化社会」、14%超で「高齢社会」、21%を超えると「超高齢社会」となる。

 

第1部でも触れたが、日本の将来推計人口の予測によれば、2015年時点ですでに、65歳以上の高齢者の占める割合は、26.6%。これが2065年には38.4%に上昇すると予測されている。

 

人口減も喫緊の課題で、2053年には人口1億人を割り込み、2065年には3割減の8808万人にまで激減するとされている。

 

総務省がまとめた「人口推計」(2017年4月1日時点)によれば、外国人を含む14歳以下の子供の数は前年より17万人少ない1571万人で、36年連続の減少となった。政府は「少子化対策」を打ち出しているが、ほとんど効果は出ていないのが現状だ。以上、ここまで。P158、159。

 

観光庁の「宿泊旅行統計調査」によれば、2016年の全国の客室稼働率平均60.3%だ。細かく見ていくと、シティホテル79.2%、ビジネスホテル74.2%、リゾートホテル56.0%、旅館37.0%簡易宿所27.1%である。このうち、シティホテル、ビジネスホテル、リゾートホテルの稼働率は、2010年の調査開始以来、最高となったという。以上、ここまで。P167。

  

引用、多めですが、多くはデータ部分なので、ご容赦を。

 

他にも、アイドルエコノミー(余剰活用型経済。大前氏の造語)や、フィンテックや、自動車産業や、不動産市況や雇用と景気や外国人観光客3000万人時代や、残業問題や、エネルギー問題や成長戦略や財政再建への提案など、盛りだくさんの論点やテーマについての深い考察がなされています。

 

これらの知識なくして、政治や経済やビジネスを語ると、恥をかくかもしれないレベルの本だと感じました。

 

お勧めです。

 

引用・参考文献。